神様がくれた虐待 ~あなたの心の傷が治るまで~最終話 後半

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ーそれは、僕が6歳の誕生日を迎える少し前のことでした。

誕生日というものは、僕にとってもやっぱり特別で、普段は決して言えない
お願いごとを言ってもいいし、そしてそれが叶えられる1年に1度の記念日です。

 

 

ジャスコで母が食料品を買うためにレジに並んでいる間、僕はレジの
奥にあるクルクル回る本棚の中にある一冊の絵本をいつも見ていました。

それは、汽車の絵本でした。

当時僕は汽車のことが大好きで、一目見た汽車の名前を言い当てることが出来るくらい、
本当に大好きだったんです。

「ねぇお母さん。この本が欲しいよ。」

母がレジで支払いを済ませ、こちらに歩いてくるたびに何度もその言葉を口にしようと
しましたが、勇気が出なくて声が出ませんでした。

「僕がワガママを言うことでそれがお母さんの負担になったらどうしよう」

「おねだりをして嫌われてしまったらどうしよう」

いつもそんな事ばかりを考えていました。

結局、僕はお母さんとの今の関係を壊したくなくて、汽車の絵本を諦めることに
しました。

僕にとってお母さんとの絆は、薄い氷のように儚(はかな)いもので。。

だけど、壊れそうな絆の中で時折見せてくれる笑顔と優しさこそが僕の唯一の希望でした。

絵本のことなどすっかり忘れてしまったころ、僕は
お母さんに「駅まで歩いてきて。」と言われました。

僕は何にも考えずに駅までトコトコと歩いていきました。

一人で駅まで行くのは初めてでしたので、少し、迷ってしまいました。
男のくせに方向オンチなのは、今も昔も変わりません。

「お母さん、どこ…?」

駅にいるはずのお母さんの姿が見えなくて、不安になる僕。

後で聞いて分かったことですが、お母さんもまた、僕がいつまでも現れないため
心配になって僕のことを探し回っていました。

僕はあの日のことを決して忘れません。

その駅で、小さな汽車の絵本を大切に抱え、必死に僕を探しているお母さんの横顔を。

だけど、僕はそんな大切なことをずっと忘れたまま
これまで生きていたんです。

僕はあの日のことを決して忘れないと誓ったはずなのに、
いつしかお兄ちゃんへの嫉妬心とか、母への疑いの心を持ってしまったために、
大切なことを忘れて生きるようになってしまいました。

僕のことをこんなに心配してくれて、愛してくれていた事実が確かにあったのに

なんで僕はこんな大切な事を、今までずっと
忘れてしまっていたんだろう…

母は優しくこう言いました。

「ノブは誰よりも優しい子。お兄ちゃんは、お兄ちゃんなのに甘えん坊で、自分が
一番じゃないとすぐに機嫌が悪くなる。お兄ちゃんは家のお金のことなんて何にも
考えずにおねだりしてきたけど、ノブはいつも色んなことをガマンして。

お母さんもノブの優しさに甘えちゃってたよね。でも本当は、誰よりもノブのことを
愛してるよ。」

と母は僕に言ってくれました。

その瞬間に、僕の心の傷は完全に癒えたんです。

だんご鼻専門セラピストnob

21002

 

 

 

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